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2022年11月21日 | 

コラム: めまいはなぜ耳鼻科なのか??!

まず、人間の身体がバランスを取る仕組みについてです。

人間の身体はバランスを取るために、視覚(目)からの情報、深部視覚(足の裏)からの情報、そして耳の奥にある内耳からの情報を脳に送っています。

この中でも、内耳には体の「加速度」を感じる機能が備わっており身体のバランスを取るのにとても重要な役割を果たしています。

「耳は音を聞くための器官である」ということを知らない人はいないと思いますが、音が耳に伝わると内耳ではリンパ液が振動するために人間は音を感じることができます。

それと同じような原理で身体が動いた時にも耳の奥のリンパ液が振動するため、内耳では身体がどう動いているのかを感知することができます。

すなわち「耳は音を聞くだけでなく、身体のバランスも感知するための器官である」ということができます。 耳が原因でおきるめまいのことを「末梢性めまい」と呼びますが、めまい全体に占める末梢性めまいの割合は、70−80%程度という報告もあり、めまいがおきたときには耳の異常がないかどうかを調べることは非常に重要です。この耳の異常を調べるためには耳のスペシャリストである耳鼻咽喉科で検査を行う必要があります。

内耳のちょっとくわしいおはなし

さきほどお伝えしたように、内耳には

  • 音を聞く
  • 身体のバランスを感知する

という2つの役割があります。

内耳には大きく分けて3つの場所があり、音を聞くための場所を蝸牛、バランスを感知する場所を前庭、半規管と呼びます。

これら3つの場所の中はすべてリンパ液で満たされており、

という流れで脳へ信号が伝わっていきます。

例えば、このリンパ液が増えすぎることによっておきる病気にメニエル病があります。

メニエル病では蝸牛も前庭も半規管もすべてのリンパ液が増えるため、めまいだけでなく難聴を伴うことになります。

また、4番目の「神経に信号が伝わる」の役割を担う神経に炎症がおきて激しいめまいがする病気に前庭神経炎があります。

蝸牛から音の情報を脳へ伝える神経は蝸牛神経、前庭から身体のバランスの情報を脳へ伝える神経は前庭神経といい、前庭神経炎では蝸牛神経は無事なため、難聴の症状はなく、激しいめまいの症状だけがおきることになります。

さらに身体のバランスを感じる前庭、半規管という2つの場所についてです。

前庭にはリンパ液が有毛細胞を動かすために、耳石という石を動かして振動を伝えます。

また半規管にはリンパ液が有毛細胞を動かすために、クプラというゼラチン状の塊が存在します。

耳石がはがれて半規管に入り込み、場合によっては耳石がクプラに付着してしまう病気に良性発作性頭位めまい症があります。

この病気ははがれた耳石が身体を動かしたときだけ異常な動きをするために、身体や頭を動かすとめまいがする、身体をうごかさないとめまいはしない、という特徴があります。

このように内耳の仕組みを理解するとめまいをおこす病気のメカニズムが明らかになってきます。

 

【メニエル病】「私メニエル病持ちなんです」には注意が必要なことも・・・

当院のめまい外来には「私昔からメニエル病持ちなんです」という方が受診されることがあります。

詳しく話を聞いてみると、昔めまいが起こって病院を受診しメニエル病と診断されたものの聴力検査はしたことがない方も多い印象です。

先ほどの内耳の項で説明したように、メニエル病はリンパ液が増えることによる病気で、別名、内リンパ水腫と呼ばれています。蝸牛、前庭、半規管すべてのリンパ液が増えるため、めまいと難聴が同時に出現します。

めまいの症状としてはぐるぐる回った感じがする回転性のめまいが特徴ですが、めまいだけでなく

  • 難聴(聞こえにくい)
  • 耳閉感(耳が詰まった感じがする)
  • 耳鳴り

など耳の聞こえの症状があるかどうかは必ず確認する必要があり、聴力検査は必須です。

またもう一つ気を付けなければならない点があります。メニエル病はめまいや難聴の発作を繰り返すという特徴があるのですが、聴力低下を繰り返し、適切な治療を受けていない場合、聴力が低下した状態で固定してもとに戻らなくなる可能性があるということです。

それを防ぐためには、聴力は早い段階で治療を開始し、経過をみていく、必要な場合には薬による治療をおこなう、ことが大切です。

  • メニエル病といわれたことがあるけど、一度も聴力検査を受けたことがない。
  • めまいを繰り返しているものの、定期的な診察を受けていない。

という方は耳鼻科の受診をおすすめします。

【良性発作性頭位めまい症】「頭を動かすとめまいがします」は耳鼻科のめまいかも?!

頭や身体を動かすとめまいがするというのはめまいの患者さんに多くみられる症状です。このような症状を訴える患者さんは良性発作性頭位めまい症という病気の可能性があります。

良性発作性頭位めまい症は内耳が原因の末梢性めまいの60%を占めるとも言われている頻度の高い病気です。

内耳の中にある前庭には耳石という石がありますが、その石がもとある部位からはがれて、半規管に入ってしまうことによりめまいを起こします。

半規管に入った耳石の影響で、頭や身体を動かすたびにリンパ液の流れに乱れが生じ、めまいを感じますが、めまい発作が始まっても、じっとしているとリンパの流れが止まるため、めまいはおさまっていきます。

この良性発作性頭位めまい症の治療で最も大切なことは、耳石がどこに入り込んでいるかを診断することです。

耳石が入りこむ先の半規管には前半規管、後半器官、外側半規管の3つが存在し(俗に三半規管と呼ばれる理由です)、左右あわせて6つの半規管があります。

また耳石が半規管内のクプラに付着している場合と付着していない場合があり、ひとくちに良性発作性頭位めまい症といってもさまざまな病態が存在します。

耳石の場所を正確に把握することで、

  • 耳石置換法

と呼ばれるリハビリを行うことができます。

耳石置換法にはエプリー法、レンペルト法、ブランダロフ法などさまざまなやり方が存在し、耳石の場所によって適切な方法を選択する必要があります。

また、複数の耳石が複数の半規管に入っている場合や治療中に耳石が別の半規管に移動する場合などさまざまなケースがあり注意を要します。

当院では耳鼻科専門医による診断をもとに院内、ご自宅でのリハビリを積極的に行い、早期の回復をサポートしています。

【前庭神経炎】風邪をひいた後におきた激しいめまいは神経の炎症を疑います

風邪を引いたときに、何となくくらくらするという症状は多くの方が経験する症状ですが、風邪をひいて数日から1週間たったあとに、突然激しいめまいや吐き気がおきることがあります。

これは、内耳から脳へ平衡感覚の情報を伝える前庭神経に炎症がおきることによるもので、前庭神経炎という病気です。

前庭神経炎の特徴は

  • めまいがとにかく激しい
  • しかも長く続く(数時間単位ではなく、数日単位で)

ということです。

激しい回転性めまいと吐き気が続くため、患者さんはとてもつらそうで、とても自宅では過ごせないため入院を余儀なくされることがしばしばあります。

炎症が原因のこの病気は、通常のめまいの治療だけでなく、ステロイドという強い抗炎症効果がある薬を使うこともあります。

【突発性難聴】ある日突然、片方の耳が聞こえない・・・

「ある日突然片方の耳が聞こえなくなりました」

このような患者さんのお話で我々耳鼻科医がまず思い浮かべる病気があります。

突発性難聴です。

この病気、原因ははっきりとはわかっていません。内耳や耳の神経へのウイルス感染や炎症によるのではないかと疑われていますが、まだ解明できていないのが現状です。

早期の治療によって回復する方も多いのですが、困ったことに治療に反応せず治らない方もいらっしゃいます。

特に「めまい」を伴った場合には、めまいがない場合よりも治りにくいことが知られているので要注意です。

この病気は、炎症が原因だと疑われているため、強力な抗炎症作用があるステロイドという薬を治療に使います。

ここで重要なのは「治療開始までのスピード」です。

治療開始が早ければ早いほど治る可能性が高くなるという報告があります。

治らない人がいる病気であるからこそ、「ある日突然片方の耳が聞こえなくなった」ときには、様子を見ずにできるだけ早い耳鼻科への受診をおすすめいたします。

なお、ごく稀ですが、両耳が同時に突発性難聴になることもあります。治療は片耳だけのときと変わりませんが、いずれにしてもすぐに耳鼻科を受診してください。

 

【内耳炎】中耳炎の治療中にめまいがしてきた

耳鼻咽喉科では中耳炎の患者さんの治療を行うことは珍しくありません。

中耳炎では、耳が痛い、聞こえにくい、耳垂れがでるなどといった症状がでます。

ところが、中耳炎の治療中にめまいや耳鳴りなど中耳炎だけでは説明がつかない症状が併発することがあります。

このようなときには、内耳炎という病気を疑います。

内耳炎はその名の通り内耳に炎症がおきる病気ですが、中耳炎は炎症がおさまったら症状もよくなるのに対して、内耳炎は「後遺症がのこりやすい」という特徴があり注意が必要です。

内耳炎を治療するにはまずその原因となっている中耳炎を一刻も早く治す必要があります。抗菌薬投与に加えて、鼓膜切開、鼓膜チューブ挿入術を行います。

また内耳の炎症を抑えるためにはステロイドという強力な抗炎症作用がある薬を使用することが多いです。

ちなみに内耳炎の原因は中耳炎だけでなく例えばおたふくかぜの原因となるムンプスウイルスも内耳炎を引き起こすことがあり、原因によって対応は異なります。

めまいの治療あれこれ

めまいの治療は大きく分けて

  • 薬の内服
  • 点滴
  • めまいリハビリ

の3つに分けられます。

〈薬の内服〉

病状によって数種類の抗めまい薬、循環改善薬、ビタミン剤を組み合わせて使用します。

また、炎症が原因の場合はステロイド、メニエル病の場合はイソバイドを追加します。

吐き気や頭痛を伴うときには、吐き気止めや頭痛薬を使用します。

通常の薬が合わない方や長期でめまいが改善しない方には漢方薬(半夏白朮天麻湯、苓桂朮甘湯など)を用いることがあります。めまいに効果的な漢方薬は多く、治療の柱になることもあります。

薬による治療とは少し違いますが、めまい持ちの方に多いのが「隠れ貧血」。ヘモグロビン値は正常な方でも、貯蔵鉄が少なかったり、赤血球が小さくもろい方もいます。そのような場合には、食事の指導やヘム鉄、タンパク質、ビタミン、ミネラルの補充のアドバイスを行います。

〈点滴〉

めまい発作がひどいときには、点滴治療を行います。

めまい止めや吐き気止めの点滴によって症状が緩和されますが、それでもすぐに症状が改善しない場合には、入院をお勧めすることがあります

〈めまいリハビリ〉

末梢性のめまいが長引いた場合、薬の治療だけではめまいが治らない場合にはめまいのリハビリが効果的です。

めまいリハビリの目的は、脳を鍛えること。内耳の機能がうまく改善しなくても、身体のバランスを制御している脳を鍛えることで、内耳の働きをカバーしてくれるようになります。

めまいリハビリでは視線を動かす、頭を動かす、首を動かす、身体を動かすなど様々な方法の中から、その方にあっためまいリハビリを段階的に指導していきます。

中枢性めまいの症状

めまいの多くが末梢性めまいと呼ばれる、内耳障害が原因ですが、脳など中枢神経系が原因で起きるめまいもあり、中枢性めまいと呼びます。

中枢性めまいの症状としては、

・意識がなくなる

・ろれつがまわらない

・激しい頭痛がする

・手足が動かない、力が入らない

などが挙げられます。

特にこのような症状が急に起きた場合には、一刻をあらそうこともあるため、救急車を呼んだり、救急病院を受診することをお勧めします。

 

気象病によるめまい、頭痛

最近、台風や低気圧が近づくと頭痛やめまいなどの症状が出る方が増えてきており、気象病と呼ばれています。

気象病の原因も一説には内耳の異常であると考えられており、耳鼻咽喉科で治療を行うことがあります。

症状を緩和する頭痛薬や抗めまい薬を使用する以外に、治療と予防、両方の目的で漢方薬(五苓散、苓桂朮甘湯など)を使用する場合があります。

また、自律神経の乱れが気象病の原因となる場合もあるため、当院では漢方治療で気象病の症状が改善しない場合、栄養状態を確認する血液検査を実施し、栄養指導を行っています。

 

 

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