補聴器は「高価なだけでなく、うるさいだけであまり役に立たない」「年寄りくさい」「格好悪い」など
ネガティブなイメージを持っている方もいるかもしれません。
実際、日本の補聴器の普及率は難聴者の15%程度であると言われており、他の先進国が40%以上普及しているのと比較してかなり低いのが現状です。
その背景には補聴器は購入して使いさえすればきこえが劇的に改善するものであるという誤解があるのではないでしょうか。
補聴器は医療器具であり、その効果を実感していただくにはただ使うだけでなく、医療的なケアが不可欠です。
そして補聴器を使う目的は、その方のきこえの力を最大限に引き出すことにあります。
補聴器の種類と選択
補聴器を選ぶ際に最も重要なことは、患者さんの聴力レベル、聴力のパターン、
生活環境によって最も適したタイプの補聴器を選ぶということです。
補聴器を検討するにあたってまず行うことは、医学的な診察です。
耳鼻咽喉科医による診察、検査を通して、補聴器が患者さんにとって役に立つかどうかを判断します。
診察によって補聴器が役に立つと判断された場合に、はじめて補聴器を検討するのですが、補聴器にはさまざまな種類があります。
聴力のレベルやパターンはさまざまであり、医学的な見地から最も適したタイプの補聴器を選択するためのアドバイスを行うのも耳鼻咽喉科医が関わる補聴器外来の重要な役割の1つになります。
患者さんは自分の聴力に最も適したタイプの中から自分の好みに合った補聴器を選択することになります。
補聴器販売店によってはこの原則が守られていない場合もあり注意が必要です。
補聴器を使ったリハビリ
補聴器を使いはじめるにあたり必要な条件があります。
それは患者さんに難聴による不自由を改善したいという意思があることです。
もし家族の強い希望があっても、患者さん本人に意思がなければ補聴器をつかったきこえの改善はうまくいきません。
また家族の応援・協力が補聴器を使いこなすのに大きな力になることも多くお互いの連携が大切になってきます。
音は耳で聞いているのではなく、脳で聞いています。
音波が耳に届くと、耳で音波が電気信号に変換されます。その電気信号が脳に届けられ人は音を認識するのです。難聴になると音の電気信号が脳に届きにくくなります。すると脳が難聴の脳に変化していきます。
そこで補聴器を使い脳に音が届くようにし、この難聴の脳を正常な脳に近づけていきます。
はじめのうちは難聴の脳にとって大きな音はうるさく感じます。
それでも補聴器を使い続けるためには、本人の難聴による不自由を改善したいという意思が不可欠です。
細かな調整と医療的なケアを行い、補聴器を使ってきこえを改善させていく脳のトレーニングをしていくことが補聴器外来の主な目的になります。
補聴器購入の補助金の話
補聴器購入の補助には主に以下の2つがあります。
- 聴覚障害による身体障害者の認定
- 確定申告による医療費控除
聴覚障害による身体障害者の認定
聴力レベルが両側70dB以上などの条件を満たす高度な難聴の場合は、身体障害者の認定をうけることができます。
認定を受けるには身体障害者福祉法第15条指定医から身体障害診断書を作成してもらう必要があります。
身体障害者手帳が発行され、医師による補聴器購入費給付意見書を補聴器購入の際に提出することで補聴器購入の補助が受けられます。
確定申告による医療費控除
補聴器外来において医師による治療の過程で補聴器が必要であると診断された場合に限り、補聴器の購入が医療費控除の対象になります。この条件に合致し確定申告する場合は、補聴器相談医に「補聴器適合に関する診療情報提供書(2018)」を作成してもらう必要があります。
補聴器外来の流れ
1.診察
外耳道、鼓膜の状態を診察し、純音聴力検査、語音聴力検査などの検査を行います。
補聴器が役に立ちそうかどうかを補聴器相談医、補聴器適合判定医が判断します。
2.補聴器相談・試聴(補聴器外来は原則金曜日午前です)
認定補聴器技能者が在籍する補聴器販売業者立会いのもと、使用目的や使用環境などを詳しくうかがい、補聴器の機種選択、聴力検査に基づくフィッティング、試聴貸出を行います。
3.補聴器の調整・点検
1週間ご自宅で試聴したのち、再び補聴器外来を受診します。
試聴は脳のトレーニングも兼ねていますので、お風呂と寝るとき以外は常に補聴器をつけたままにしていただきます。
最初の1ー2週間が最もいろいろな雑音が気になりつらいときです。それを過ぎると慣れが進んできますので、頑張って補聴器を付けていただきます。雑音と一括りにされがちですが、「雑音」という音に脳が驚いているだけなのです。
試聴した感想を詳しく教えていただき、必要に応じて再調整や貸出器種の変更を行います。継続しての貸出しも可能です。
4.補聴器の選択・作成
補聴器の効果が十分に感じられ、脳のトレーニングを継続する意思を確認できましたら補聴器を決定します。
あまり効果が実感できない場合、脳のトレーニングを継続できない場合は補聴器を返却していただいても構いません。
ご希望の種類、予算金額を考慮し、患者さんに合ったものを選びます。
5.補聴器の調整と脳のトレーニングの継続
いよいよ本格的な補聴器によるトレーニングの開始となります。頻回の調整で少しずつ補聴器の調整をしていき、目標のきこえのレベルを目指します。
歳だからとあきらめる必要はありません。患者さんの失いかけたきこえの力を引き出していき、補聴器が患者さんにとってなくてはならないものになるようサポートしてまいります。
補聴器外来
ワンポイントアドバイス
難聴を放置すると「うつ」や「認知症」になることも。
人生100年時代を迎え、寿命が伸びていくとともに加齢に伴う身体の不調を経験する方も増えてきています。加齢による難聴もそのうちの1つで、難聴になると他者とのコミュニケーションが取りづらくなり、社会的孤立を引き起こすことにつながると考えられています。
社会的に孤立すると、認知症やうつの危険性が高まります。最近の研究で、難聴を放置するとうつの危険性が3倍、認知症の危険性が5倍になることがわかりました。健康寿命を伸ばすためにも難聴への対策として補聴器を使用することの重要性がますます高まってきています。
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